臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
見えたのは燦々と降り注ぐ太陽と、緑豊かな畑……。

……畑?

思わず開けた扉と、上がってきた階段を見下ろす。

うん。私はさっきまで間違いなく会社にいたんだよね。

それから視線を戻して、たぶん白昼夢ではない景色を眺める。

あそこにはミニトマト、あそこはキュウリと茄子。
そっちにはししとうと、あの地面から生えている緑はなんだろう。
あっちの列とそっちの列じゃ、葉っぱの種類が違うみたいだ。


……いや、待って?

そもそもビルの扉を開けたら、土が見えるとかってどういうこと?

うん。たぶんここは屋上。

屋上だから、フェンスが張り巡らされている。

だけど屋上にありがちなコンクリートの床ではなく、土が敷き詰められているだけ。

……だけ?

疑問はともかく。まわりを見回せば、ここがオフィスビルに囲まれたビルの屋上だということはわかる。

そして、畑の奥の方に小さな家があるのも。

そしてその脇には植木があって、ベンチがあって、会長が作業着姿でお茶を飲みながら、黙って私を見ているのも。


……うちの会社って、大丈夫なんだろうか。

ちょっぴり真剣に考えかけたけど、今まで大丈夫だったんだから、大丈夫なんだろう。

さすがにここから大きな声で役員会議の事を伝えるわけにいかないし、パンプスを脱いで土の上をスタスタ歩いていくと、会長が眉を上げるのが見えた。
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