臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
火曜日は詩織とご飯、水曜日は実家に用事、昨日は買い物があるので……ランチと夕飯のお誘いをことごとく断った。

正直、すでに断る理由が思いつかなくなっているんだけど。

でも、この方がいいと思う。
やっぱり、近づき過ぎるのはよくない。

いくら気安くしてくれているからって言っても、相手は我が社の社長なんだから。

その社長は単に女性関係が煩わしいだけなんだし、表向きは噂されるように振る舞うのはいいとしてもね。

執務室の中まで演技をする必要はないんだし、それにそろそろ元のポジションに戻るんだから、少しづつ離れて行くのも有りだと思う。

私が完璧に“勘違い”する前に……って、考えたんだけどさ。


めっちゃ不服そうにしてるよ。この男は……。


「……用件が以上であれば、私は失礼いたします」

触らぬ神に祟りなしって言うし、今度こそ退室しようとして、ドアに手をかけた。

「美和。逃げるな」

「私は仕事中なので……」

「俺は休憩中。いいからこっち向け」

渋々振り返ると、社長が私の顔をじっと眺めてくる。

「何だろう。不機嫌そうに見えるな」

「独り言ですか? それとも私に聞いてますか?」

「どっちだろうなぁ」

それは私のセリフじゃないかな。

私が不機嫌そうに見えるが見えないかの“どっちだろうなぁ”?

それとも、独り言なのか、問いなのかの答えをからかう“どっちだろうなぁ”?

それともマジに独り言?

たまに全く考えがわからない。
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