臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「女は不可解で困る」

「お互い様です。用が無いのでしたら本当に失礼しますから」

三度目は、流石に引き留められずに執務室から退室出来た。

まぁ。社長も薄々私の嘘には気づいているんだろうな。

小さく肩を竦めてデスクに戻り、かかってくる内線に対応しながら資料整理を始める。

しばらくして、社長がコーヒーカップ片手に執務室から出てきた。


「美和。少しいいか?」

それだけ言って、私のデスクの前にある応接セットに座ってソファを指差す。

え。座れって言うの?

「……大きな声で話すような事じゃないから、座れ」

「本日の予定では、時間に余裕はございませんが」

「わかっている。ないから困るんだ」

無表情に見つめ返されて、無意識に右手のリングを弄った。


……本当に余裕は無いはずなんだけどな。


横領疑惑のある食品工場の件について、水面下ではいろいろと調査をしながら、表立っては通常業務をこなしていかないとならない。

だけど、役員の方たちのスケジュールは、実は緻密に組み立てられていたりするから大変なんだ。


……何だかわからないけど、さっさと終わらせた方が良さそうだ。

ソファに座り社長を見返すと、社長はじっと黙り込んでいる。

相変わらず綺麗な顔をしてるなぁ。
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