臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「報酬のリングはいりません。私には、男の人の考え方はわかりませんが」

なんの気持ちもない贈り物は、ただの物にしかならないと思う。

社長の恋人として“見えるように”買われたワンピースやスーツ。
社長の恋人らしく、高価な“プレゼント”に見えるように買われた装飾品。

すべてがカモフラージュの偽物たち。

偽物は偽物。そんな意味のない物はいらない。


社長はじっとテーブルに置かれたリングを見つめていたけれど、それを指先で掴んで黙り込む。

何を考えているのかわからない無表情。

そのままの視線を、真っ直ぐに私に向けた。


「これで、終わりかな?」

静かな問いは、とても小さな声でなされる。


「ええ。終わりです」

言いながら、ニッコリ微笑んだ。

……願わくば、本当の笑顔に見えますように。









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