臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「女がお洒落していたら、自分のために装っている、なんて考える方が頭湧いてんのよ! 自分の為のお洒落だってあるわけよ。それを“誘ってる”とか、勘違いも甚だしいじゃない!」

「はあ……」

うーん。これは何と返事をすればいいんだろ。

「だからね! 西澤さんも社長にフラレたからって地味になる必要はないのよ! どうせなら見返すくらいに綺麗にならないと!」

……うん。普通に社長に買ってもらったスーツは春夏物で、単に秋冬物までなかったから、今日は私の持っていたスーツを着て来ただけなんだけど。

なんとなく、春日井さんが私を励まそうとしているらしい事はわかる。

たぶん彼女の頭の中では、私が社長にフラレて、意気消沈して、元の地味な格好に戻った、という図解が展開されているんだろう。

「でも、他に持っていないし……」

「ないなら買うのよ!」

「でも、スーツ高いし……」

「あなたはどこの会社の秘書してるのよ! 貯金に熱入れてるんじゃないでしょうね! のんびりしていたらアッと言う間にお婆ちゃんよ! しかも一人暮らしの年金暮らし、まっしぐら!」

……どうしてそうなるんだ。

「女はね、綺麗にしていい男を捕まえないと。装うのは義務よ義務!」

自信満々の春日井さんに、びっくりしていたら、隣りの席から拍手が起こった。

「横暴だけど、ある意味賛成。美和は家庭を目指してるから、綺麗に装うのはいいと思う」

「詩織……」

詩織はうんうん頷いて、私を見る。
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