臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「前々から思ってけど、美和のセンスは酷いもんよね。あのスーツは社長のお見立てだったの?」

「たぶん? ワンピース買ったお店で、社長が見繕ってくれとか言っていて、勝手に届けられたから……店員さんが最終的に選んだのかな?」

恐らく店員さんはニッコニコしながら、一応、社長の好みも取り入れて選んだんだろうと思うけど。

「そんな高そうなお店で買わなくてもいいじゃない。知り合いのアパレルメーカー紹介するから」

春日井さんがキリッとした顔で私達を見下ろした。

「それに玉の輿狙うなら、やっぱり綺麗にしておかないとでしょ。枯れ葉色のスーツじゃねえ?」

……枯れ葉色。せめてダークブラウンと言ってほしいよ。

「……私もそろそろ婚活しなくちゃいけないけど、玉の輿はいいかなぁ。気疲れしそう」

「西澤さんは夢がないのねぇ」

しみじみと、何故か悲しげに呟く春日井さんに思わず吹き出した。

考えてみれば、私と詩織と春日井さん。同期のはずなのに、こういった話はしたことないよね。

「よければ、今日の帰りに買いに行かない? 私もそろそろ新しいパンプス欲しいし。ちなみに、私の知り合いのところなら安くできるけど」

春日井さんが微笑むと、すかさず詩織が手を上げる。

「それなら、私も行く〜」

「成田さんは誘っていないから!」

「そう言わず〜。私も新しい服が欲しいし」

キャンキャン言い争う二人を、眺めながら苦笑した。
< 224 / 255 >

この作品をシェア

pagetop