臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「社長は、本当にたくさんの人に愛されて育ったんですね」

「まぁね。小さな頃から度胸だけはあったし、警備員の目を掻い潜って会社に来ては、当時の運転手さんと一緒になって叱られていたよ」

野村さんはどこか懐かしむように微笑んで、それから私を見た。

「若いうちは、まわり道もたまにはいいよね。その時、その場じゃないと知らないことを知れるから。でも、過信はしないようにね。人間、いつどこで何があるかなんてわからないんだし」

「……まぁ」

そうでしょうけど……。

「幸い僕は足を骨折するくらいですんだけど、跳ね飛ばされて倒れる瞬間に思ったことは……あ。これで人生終わったかな?って事と、もっと孫と遊んでいたかったなって事かな」

「……野村さんじゃないと言えない事ですね〜」

「社長にも言えるはずなんだけどね。彼は事故で両親を一度に亡くされているんだから」

そうですね。たぶん、何も感じなかったわけじゃないんだろうけど……。

「もう少し、社長はわがままでもいいと思わないかい?」

そう聞かれて、めちゃくちゃ嫌な顔をしてしまった。

「あれ以上わがままになられたら困ります。人が将来的な話をしたら“年子ならまだ余裕だろ”とか言ってくるんですから」

怒って言うと、野村さんは目を丸くして、そして吹き出した。

もう、笑い事じゃないんですけど。
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