臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
戦場のようです。
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翌日は朝から大変だった。

レースたくさんの清楚な白いワンピース。これは予定の内だからいい。

社長に『これにしよう』と……。
意訳すると『これにするぞ、異存はないな、小娘』と選ばれて、身に付けた真珠のネックレスにピアス。これもアクセサリーを選んだときに説得させられたから良しとしよう。

だけど、美容室に連れていかれる事は本気で想定外だ。

髪は毛先だけを巻いて下ろしている。

可愛らしく両手両足の爪に珊瑚色のマニキュアにペディキュアを塗られ、お化粧も大人清楚をコンセプトに仕上げられた。

右手にはうん十万のカモフラージュリング。

鏡を眺めた感想は……どこのお嬢様なんだよ……だ。

そう思ったけど、プロのヘアメイクさんにそんな事も言えず、連れてきてもらった副社長の奥様の笑顔に迎えられて黙るしかなかった。

私を見た社長なんて……。

「思っていた以上に綺麗じゃないか」

……私の化粧とプロのメイクテクニックを比べないで欲しいっす。

てか、その見たこともない楽しそうな笑顔もやめて欲しいです。


私は全然楽しくないんだからね!


俯きながらブツブツ言っていると、社長に右手を引かれて顔を上げる。

「せっかく綺麗なのに、不機嫌そうにしていたら台無しだぞ? まぁ、顔が赤いから半分は照れているんだろうが」

そう言ってスルリと指先で私の頬を撫でて……そのまま首筋を辿り、真珠のネックレスで止まる。

ついでに私の息も止まる勢いだ。
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