臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
だって社長、いつもパリッと高級そうなスーツ着ている。

だけど、いつもよりキマって見えるのはどうして?

いつもと違っているのは、ネクタイの結び方がややこしそうってことと、胸ポケットには白のハンカチーフが入っているくらい。

あ。スーツの布自体も光沢があって、触れたら心地良さそうな気もするけど……。

フェロモンが10割増しな気がするんだけど!

そんなのが“嬉しそう”とか“楽しそう”に優しく微笑んでいるなんて……。

目に優しくない。絶対に優しくない。

それどころか非常に身体に悪影響を与えてきそう。

もう与えられている気もするけど。


「動悸と目眩がするので、帰っていいですか?」

必死になっていうと、真剣な顔を返された。

「良いわけがないだろう。時間が迫っているから行くぞ」

……ですよね~。

社長に手を引かれるまま、半泣きになりながら美容室を出る。


「あ。社長……奥様は……」

言いかけた時、副社長が現れた。

「やあ。綺麗になったね、西澤さん」

そう言って立ち止まる事なく素通りすると、副社長は奥様に両手を広げて近づいていく。

……これは見てはいけない場面ってやつだよね。

慌てて視線を逸らすと、どこか寂しげに二人を見ている社長が見えた。

「叔父さんは愛妻家だから」

ポツリと呟かれた言葉が、どこか羨ましげ?
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