臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「社長も理想はあんな感じですか?」

聞いてみると、静かな視線が下りてくる。

その眼のなかに、一瞬だけ迷いが見えた気がした……けど、すぐに消えしまった。

「俺にはまだ、嫁さんを守るだけの力はないよ」

「社長は、奥様になった方を守りたいんですか?」

「そうだな。女性は守るものだと教えられて育っているから」

そうなんだ。それじゃあ、見た目が大和撫子な峰社長が、実は獰猛な肉食女子だと知って、カルチャーショックもすごかったんだろうなぁ。


「最近の女子はあまり守られませんけど」

からかうようにして言うと、小さくクスッと笑われた。

「だからと言って、女性に守られるのでは男としては情けないぞ」

「守り方の領分が違うんじゃないでしょうかねぇ」

「そういうもんか?」

「たぶん……でも、色んな考え方がありますからねぇ」

お互いにクスクス笑いながら、待っていてくれた小杉さんに手を振って、車に乗り込んだ。

「いいか。会場についたら俺から離れるんじゃないぞ?」

「かしこまりました」

「俺がスピーチに立っている時は、副社長の隣にいろ」

「わかりました」

「誰か女性に呼ばれても、絶対についていくんじゃないぞ?」

えーと……。

「社長、くどいです……」

ボソリと反論したら、ジロリと睨まれる。

そして、小杉さんが運転する車は、厳かにパーティー会場のホテルに到着した。





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