臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
*****



車から先に降りた社長の手を借りて車から降りる。

「気を抜くなよ?」

「社長こそ」

こっそり言い合うと、社長は空いている手を腰にまわしてきた。

スーツを着た人がにこやかに近づいてきて、社長に挨拶をする。

社長が普段にないくらい柔らかい口調で返事をしているけど、正直、私はそれどころじゃない。


……エスコートされてるよ、私。

ど、どうでも良いけど、腰に手をまわすのはやめてくれないかな。

さすがに恥ずかしくて身悶えしそうなんだけど。

モゾモゾしていたのに気がついたのか、彼はにこやかな笑みを浮かべて耳元まで身を屈める。


「赤くなるな。平常心でいろ。いつもこうしていると思い込め」

ここまでする必要ある?

もう心臓はバクバクしているし、耳元で囁くようにして言うからくすぐったいし、その眉目秀麗な顔を近づけられたら息できないし。

それでも笑みを崩さなかった私に天晴れだ!


「もう始まっちゃってるんですか?」

「言っただろう。善くも悪くも俺は顔が売れてる」

傍目には、にこやかに会話しているように見えるだろう。

笑みを張り付けたままロビーに踏み込んで、チラリと辺りを見回すといくつか興味津々の視線とぶつかった。


これは正に動物園状態じゃ?


に、逃げてもいいですか?
< 93 / 255 >

この作品をシェア

pagetop