臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
無難に社長のスピーチが終わったらしい。

壇上の彼を見上げると目が合った。

拍手の中、ゆっくりと社長が来賓に挨拶しながら近づいてくるのが見える。


そして私の目の前に立つと、社長は爽やかに微笑んで首を傾げた。


「お前……」

「はい?」

「聞いてなかっただろ」


……おう。バレていたらしい。


いやぁ、だってさ。こういう祝賀会とかパーティーとかのスピーチって、どれも似たり寄ったりじゃないか。

わざわざ記憶に残そうとはあまり思わないって。

私はほら、スピーチは聞き流せばいいか~って思う人種なわけでさ。

いや、たまにそれで困るときもあるけど、そんな大事にもならないし。

ここは可愛らしく顔でも赤らめながらオドオドして『すみません』とするのがセオリーだろうけど……。


「お前らしいと言えばお前らしいか」

それはそれで、どんな認識だって突っ込みを入れたくなるんだけども?


「叔母さん、ありがとうございます」

社長が麻百合さんにそう言うと、彼女はそっと副社長の隣りに戻り、社長が私の横に立った。


……何だろう。気のせいかな。

私が逆に、守られているような気分になるのはどうして?

「社長?」

声をかけると無言で見下ろされる。

「そんなに長居するつもりはないから安心しろ」

はぁ……さようでございますか。

でも、それでホッとするのは社長じゃないの?
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