優しい大地とお兄ちゃん





短い沈黙が流れた。

兄妹なのに、大好きなお兄ちゃんと一緒の空間にいるのが辛かった。




「もう、離して・・」



私がそう言うと、お兄ちゃんは私からゆっくり離れた。



「さくら?」



不安そうなお兄ちゃんの声。

そして、また私の頭にお兄ちゃんの手が伸びてきた。


「もう、私に触らないで!」



そう叫ぶと、お兄ちゃんの手は一瞬頭上で止まり、ゆっくり下に降ろされた。



「・・お前ももう、子供じゃないんだな」


「・・・」



寂しそうなお兄ちゃんの声。

そんな声で言ったって、私はもうお兄ちゃんに甘えたりなんかしない・・。

大地のこと、好きになるって決めたんだから・・。



「・・悪かったな」



それだけ言って、お兄ちゃんは私の部屋から出て行った。


急に部屋が静まり返り、ポツンと残された私は、寂しくなり枕を抱き締めた。



「お兄ちゃんなんて・・・」



・・その先の言葉が出てこなかった。


無意識に、私は携帯に手を伸ばして、大地に電話をかけていた。

大地は、すぐに出てくれた。



『もしもし?』


『・・大地』


『どうした?また何かあったのか?』



少し焦ったような大地の声が聞こえてきた。



『・・・』


『さくら?』



何も言わない私に、大地は心配そうな声で私の名前を呼んだ。



『・・ごめん、何でもないの。ただ大地の声が聞きたくなっただけ』



お兄ちゃんとの事は、言わない方がいいと思った。

せっかく大地に、心を軽くしてもらったのに、またお兄ちゃんに、関わるな、って言われたなんて、そんな事言えない。



『本当か?』


『うん・・ごめんね?』


『いいよ。さくらからの電話、俺すげー嬉しいし』



そう言って電話越しに、大地の照れたような声が聞こえてきた。


大地、ごめんね・・。

だけど、声が聞きたくなったっていうのは、本当だよ?





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