そして目覚めの口づけを
それよりも確かめたい事柄があり、私は反射的に質問していた。


「ん?いや…」


一瞬思案した後彼は続ける。


「近所への買い物くらいならこの格好のまま出かけると思う。だけど遠出する際にはやっぱり眼鏡がないと不便だし、髪の毛も邪魔だからセットもするだろうけど」

「じ、じゃあ、仕事の時は、いつものあの垢抜けないしょぼくれた格好の貴志さんってことですね?」

「……その表現は大いに引っ掛かるけど、まぁ、必然的にそうなるよな」

「よかった…」


私は心の底から安堵のため息を漏らした。


「そういう雰囲気のまま出勤されたりしたら、私的に大ピンチでした」

「?なぜ?」

「だって、そんな男前な正体に気付かれてしまったら、他にも貴志さんのことを好きになっちゃう人が出てくるかもしれないですもん。職場で恋のライバルとのバトルを繰り広げなくちゃいけないなんてすこぶる面倒くさそうだし」

「へっ?」

「だから貴志さんには団塊世代のおじ様方でさえ突っ込みを入れずにはいられないくらいに古めかしい、『ザ☆ジャパニーズサラリーマン!』なスタイルをこれからも貫いていってもらわないと」


「………君、自分が何を言ってるか分かってる?」

「え?ですから、貴志さんには今まで通り超絶にダサイ仮の姿を…」
「いや、その部分はもう強調しなくて良いから。それより二個前くらいの発言に対して言ってるんだけど」
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