いつか必ずあなたの心掴むから
「そんな事言われても・・」


私は真っ赤になった。


多分私の好きな男は目の前にいる人。


私がモジモジしていると


「俺は影(かげ)」


と言った。


「影??」


「そう。まわりからはそう呼ばれてる」


と言ってコーヒーを飲んだ。



「影って変わった名前ですね」


と私が言うと、


「だから言いたくなかった」


と彼はカップを置いた。


(影・・影・・)私は心の中にメモするようにこの名前を唱えた。


彼は煙草を消して立ち上がった。


「俺は風呂に入る。腹減ってたら台所にあるもの適当に食っていいから」


と言ってリビングを出て行った。



一人残された私はリビングを見渡した。


殺風景な部屋だった。


お腹がぐうっと鳴った。


時計を見ればもう10時。


私はキッチンへ行ってみた。


冷蔵庫を開けるとお酒とスポーツ飲料しか入っていなかった。


私は冷凍庫を開けてみた。


冷凍のラザニアが入っていた。


(一個しかないけど食べてもいいのかな)


と思いながらも私はチンして食べた。



そこへ影が入ってきた。


「随分早いんですね」


と私はラザニアを口からこぼしそうになりながら聞いた。


「俺はシャワーしか浴びないから」


と言って、冷蔵庫を開けてビールを飲んだ。


一気飲みをしてまた缶ビールを開けた。



「お前、泊めてやるよ」


と影は言った。


「いいんですか?」


影はダイニングテーブルに座ってビールを飲んだ。


「送ってやりたくても酒飲んじゃったしね」


と私を見た。


影の瞳には意味深な光が映っていた。


「お前もそれ食ったら風呂入ってきな」


と影は言った。


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