私、今から詐欺師になります
 



 朝、社長室に挨拶に行くのが習慣になっているので、茅野は、そっとその扉を叩いた。

「はい」
と穂積の声がしたが、今日はいまいち嬉しくない。

 そっと小さく扉を開け、その隙間から覗いた茅野は、
「おはようございます。
 今日もよろしくお願い致します」
とだけ言って、すぐに閉める。

 だが、行こうとしたとき、後ろから誰かが腕をつかんできた。

 昨日の秀行を思い出し、びくりとしたが、穂積だった。

 ちょっと来い、と部屋に引き込まれる。

「なに逃げてんだ。
 怖いだろうが、そんな隙間から女が覗いてたら」

「す、すみません。
 脅かしまして。

 ちょっとその、思うところありまして」
と、ごにょごにょと言うと、

「なんだ。
 はっきり言え」
と穂積は威圧的に言ってくる。

「今日はちょっと、穂積さんの前に立てるような私ではないんです。
 なんだか自己嫌悪で」

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