私、今から詐欺師になります
 



「玲さん、愛ってなんですかね?」

 いきなり、茅野がそう呟くと、横の席に居た玲が飲みかけていた珈琲を吹いた。

 わああああっ、キーボードがっ、と麗しい顔のまま、男の口調で叫ぶ。

 はい、と片手でキーボードを叩きながら、ティッシュを渡すと、

「茅野ちゃん、あの……一点見据えたまま言わないで。
 怖いから」
とディスプレイを見つめたままの茅野に言ってきた。

 茅野は溜息をつきつつ、手早く、手許の資料を捲る。

「夕べ、なんとなく穂積さんの顔が頭に浮かんで。

 穂積さんに申し訳ないなって思いました。

 私、穂積さんが好きなんでしょうか?」

 玲は慌てて周囲を窺うが、まだ誰も会議から戻ってきていないのは確認済みだ。

「人を好きになるとかわからないです。

 今まで誰も好きになったことないし。

 私は、もう、誰かを好きになっていいような人間じゃないから」

「……茅野ちゃん、寂しいこと言わないで」
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