私、今から詐欺師になります
「私にだって、いろいろ夢はありましたよ。

 自分の未来を思い描いたりもしてました。

 好きな人と結婚して、子どもを産んで、一緒に年をとっていくんです。

 いえ、そういうの、夢とかじゃなくて。

 それが当たり前で、普通のことなんだと思ってました。

 でも、全然、簡単なことじゃなかったですね」

 秀行との結婚が決まったときも、そこから続いた今の人生でも。

 いつもちょっと泣きたい気分だった気がしたけど、泣けなかった。

 お父さんもお母さんも、みんなも笑ってるから、これでいいんだ。

 そう思って。

 でも、なんだか今は泣きそうだ。

 なんでだろうな。

 よくわからない。

 なんで今なのかも、よくわからない。

「……茅野ちゃん」

 そう呼びかけた玲が、ぽんぽん、と後ろ頭を叩いてくる。

「お昼はなにか美味しいもの食べに行こう」
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