私、今から詐欺師になります

 


 昼過ぎ、穂積の許に、玲が頼んでおいた書類を持ってきた。

 いつものなら、そのまま出て行くのに、何故か、黙ってそこに立っている。

「どうした?」
と血のつながらない弟を見上げると、

「おにーちゃん」
と呼んでくる。

 こいつが、おにーちゃんとか言うと、ロクなことがないんだが……、と思いながら、その顔を見ると、

「僕、美人秘書、やめていい?」
と玲は言ってきた。

「……どうした、突然」

 男にちやほやされて、楽しそうにやってたのに、と思いながらも、ペンを置き、
「とりあえず、自分で言うな」
と教える。

 自ら美人秘書とか言う奴があるか、と思ったのだ。

 だが、玲はその言葉は聞かず、
「ああでも、僕のあと、茅野ちゃんを秘書にはしないでね。
 なんだかおかしなことになってきたから」
と言ってくる。

「昼、茅野ちゃんとランチしてるときに、茂野社長に茅野ちゃんが此処に勤めてるってバレちゃったんだよね」

「先にそれを言え」
と言いながらも、まあ、遠からずバレるだろうとは思っていた。
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