私、今から詐欺師になります
「で、茂野はなんて?」

「菓子折り持って挨拶にくると言うから、丁重にお断りしといたよ」

 ああ、不気味に丁寧な口調でやってきそうだな、と思う。

「なんだかよくわからんが。
 お前が秘書をやめたいというのなら、それでいい」

「いや、やめたいのは秘書じゃなくて、女装をやめたいだけなんだけど」

「……何度も言うようだが、その女装。
 俺がやらせてるわけじゃないからな」

 いつでもやめろ、と穂積は言う。

「子どもの頃、家庭教師の女の先生に襲われかけたのが、トラウマで、ずっと女装してたんだけど」
ととんでもない過去を暴露してくる。

 いや、それで、そんな風になったら、逆に男に襲われないだろうか……?
と今更ながらに心配してみた。

 出会ったときから、こんな格好していたし。

 明らかに楽しそうだったんだが。

 トラウマがあったからだったのか。

 まあ、なにかあるんだろうとは思っていたが。
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