私、今から詐欺師になります
「えっ。
 嫌ですっ」

「お前は俺が金で買ったんだ」

 俺に逆らうなど許さんっ、と秀行は言う。

「貴方、何処の悪徳商人ですかっ」
と茅野は秀行の足を踏むと、身を翻して逃げ出した。

 掃除機の入っている細長い戸棚に飛びつき、それを開ける。

 中から取り出したものを、秀行に向かって構えた。

 鉄パイプの先がU字型になっている鉄製の防具だ。

「なんだ、それはっ」

「刺股(さすまた)ですっ。

 学校などに設置されている不審者の行動を封じ込めるものですっ」

「お前はウィキペディアかっ」

 そんな説明を訊いてるんじゃないっ、と言われたとき、エプロンのポケットに入れていた携帯が鳴り出した。

「あ、穂積さん。
 こんばんは」

「なに平気な顔で愛人と話してるんだ……」

 刺股を向けられたまま、秀行は文句を言う。

「大丈夫です。
 帰りに刺股を買ったので。

 え?
 帰り道にあるんですよ、そういう店が」

『……どういう店だ』
と穂積に言われる。
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