私、今から詐欺師になります
「あ、おはようございます」
朝、茅野は一階で穂積に出会った。
茅野は三階のバスセンターから来るのだが、受付の人にちょっとお礼を言おうと小さなお菓子を持参し、下に下りてきたのだ。
「どうした。
早いじゃないか。
……昨日は大丈夫だったか?」
と穂積が訊いてくる。
「大丈夫です。
刺股は取り上げられましたが。
実は、部屋の鍵を改造したので」
と勝ち誇ると、改造ってなんだ、と眉をひそめたあとで、
「刺股って、結構デカイだろ。
買ったあと、どうやって家まで持って帰ったんだ?」
と訊いてきた。
「え?
手に持ってですよ。
ほら、海神ポセイドンみたいに、こう立てて持って」
「なにがポセイドンだ」
あれ、三叉だろうが、と言われる。
「っていうか、それ、注目の的だったろ?」
「いや、学校の先生だとても思ったんじゃないですかねー?
あれ、学校にあるじゃないですか。
抱えてバスに乗ったけど、なにも言われませんでしたよ」