私、今から詐欺師になります
 同じように学生時代に企業して、同じように脇目も振らず、突っ走ってきた自分と秀行はきっと似た性格をしている。

 その人生が別れたのは、ただ、途中で茅野に出会ったかどうか、それだけではないのか。

 茅野を見下ろすと、彼女は、にこ、と微笑む。

 女も誰でも同じだと言うのなら、自分と結婚していなくていいだろう、という茅野の言葉を思い出していた。

 それは秀行にも自分にも当てはまる言葉だ。

 だが、秀行は茅野と別れないだろうし、自分もまた――。

 そんなことを考えていたとき、チン、と可愛らしい音がして、扉が開いた。

 茅野がこちらを振り向く。

「社長、着きましたよ。
 行きましょう」

 初めて会ったときの思い詰めた感じはなく、茅野は、にこにこと楽しそうだ。

 秀行の思っている通り、茅野はただ、外の世界に触れてみたかっただけなのかもしれない。

 今、抱き寄せて、キスしてみたら、どうなるだろう?
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