私、今から詐欺師になります
 



「おはようございます、玲さん」

 職場に着いた茅野は隣の席に座る男に微笑みかけた。

「おはよう、茅野ちゃん」
と振り返り、笑い返してくる玲を見て、笑ってしまう。

「本当に男の人みたいですね」

「……ま、最初から男なんだけどね」

「あーあ」
と前の席の有村が言った。

「これで職場の楽しみがひとつ減っちゃったじゃない」

 パソコンを打ちながら、そんな文句を言ってくる。

「なにそれ、有村。
 男だってわかってても、格好だけでも女なら良かったわけ?」
と玲が笑って訊いている。

「だってー。
 どうせ、本物でも偽物でも、触れるわけじゃないんだから、どっちでも一緒でしょー?」
とロクでもないことを言っていた。

「んー。
 でも、確かに、ちょっと寂しいかな」
と玲が呟く。

「エレベーターで男がボタン押してくれたり、お先にどうぞって言ってくれたりしなくなるよねー」
< 153 / 324 >

この作品をシェア

pagetop