私、今から詐欺師になります
「おはようございます、玲さん」
職場に着いた茅野は隣の席に座る男に微笑みかけた。
「おはよう、茅野ちゃん」
と振り返り、笑い返してくる玲を見て、笑ってしまう。
「本当に男の人みたいですね」
「……ま、最初から男なんだけどね」
「あーあ」
と前の席の有村が言った。
「これで職場の楽しみがひとつ減っちゃったじゃない」
パソコンを打ちながら、そんな文句を言ってくる。
「なにそれ、有村。
男だってわかってても、格好だけでも女なら良かったわけ?」
と玲が笑って訊いている。
「だってー。
どうせ、本物でも偽物でも、触れるわけじゃないんだから、どっちでも一緒でしょー?」
とロクでもないことを言っていた。
「んー。
でも、確かに、ちょっと寂しいかな」
と玲が呟く。
「エレベーターで男がボタン押してくれたり、お先にどうぞって言ってくれたりしなくなるよねー」