私、今から詐欺師になります
「……玲さん、それ、今度は自分がしてあげないと」
と茅野が言うと、

「あ、でも、今まで睨んできてた別の会社のおばちゃんがエレベーターで優しくしてくれたかな」
と言う。

「よかったですね、玲さん。
 あ、玲司さん」
と言ったそのとき、

「茅野」
と社長室の扉が開いて、穂積が顔を出してきた。

 それに気づいて、玲が言う。

「ほら、茅野ちゃん。
 社長がお呼びだよ。

 朝の挨拶に行ってないからじゃない?」

「えっ?
 でも、今朝は下でお会いして、もうご挨拶しましたよ」

「……茅野ちゃん、意外とクールだね。
 ちょっとでも顔見たいなとか思わないの?

 それとも、うちのお兄ちゃんは、本当にただ、もてあそばれてるだけなの?」
と玲は両の腰に手をやり、訊いてくる。

 茅野は、あはは、と笑い、
「私にもてあそぶとかそんな芸当できるはずありません」

 じゃ、行ってきまーす、と言って、社長室に向かった。



< 154 / 324 >

この作品をシェア

pagetop