私、今から詐欺師になります
「あら、ごめんなさい。
 茂野社長の奥さんだから、こんな口のきき方しちゃ駄目よね。

 なんだか幼く見えるから」
と言ってくる。

「いいえ。
 大丈夫です」

 もしかしたら、私の方が年上だったりして、と思ったのだが、それを言うと、余計恐縮してしまわれそうなので、黙っていた。

 ねえ、と彼女は声を落とし、顔を近づけ、言ってくる。

「玲様、どうして突然、男になったの?」

 いや、男になったわけじゃ、と茅野は苦笑いした。

「いろいろ思うところあったんじゃないですか?
 一層、仕事に打ち込まれたくなったとか」

「まあー、女だったら、限界あるわよね。
 なんだかんだ言っても」

 あ、しんみりしちゃった、と思いながら、
「あの、この間はありがとうございました。
 携帯」
と小さく可愛らしいお菓子の包みを差し出すと、

「いいのよ。
 こんなことしてくれなくても。

 そんなことより、男になった玲様の写真とか撮ってきてよ。
 貴女なら、至近距離で撮れるでしょ」
と両肩を叩かれる。
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