私、今から詐欺師になります
 



 それより、少し前。

 茅野は、あ、そうだそうだ。
 受付の人にお菓子渡しそびれてた、と受付に下りていた。

 もういらっしゃらないかな? と思ったのだが、秋本佐緒里はまだそこに居た。

 エレベーターから降り、目線を合わせるか合わせないかのうちに、手招きしてくる。

 え? 私ですか? と、ととと、と近づくと、
「貴女、茂野社長の奥さんなんですって?」
と訊いてくる。

「はあ、まあ、今のとこ」
と言うと、今のとこ……? という顔をしたあとで、

「そうなんだ?
 いいわね、茂野社長と結婚なんて」
と言ってくる。

「……いいですか?」
とかなり疑問に思い、訊いてみた。

「だって、なんていうか、茂野社長、オーラと色気があるじゃない。
 悪の魅力とでもいうか」
と言ってくる。

 やっぱり悪なんだ、と茅野は苦笑いする。
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