私、今から詐欺師になります
「じゃ、あげます」
と茅野が言い出す。

「えっ、いらないよ」

「あげます」
と繰り返す茅野の真剣な瞳に、押し付けようとする強い意志を感じて、玲は悲鳴をあげた。

「私、男に興味ないからっ」

「……ですよね」
と茅野は溜息をつく。

 やはり、わかっていたようだ。

 昨日、マジマジと玲の手を見ていたようだし。

 幾ら綺麗に装っても、男と女では、やはり、部分的に違うようだ。

「僕、女装が趣味なだけで、ゲイじゃないからっ。

 穂積が……社長が女を一度雇ったら付きまとわれてめんどくさかったから、僕に秘書やらせてるだけだからねっ」

「待て。
 その言い方だと、俺がお前を職場でわざわざ女装させてるみたいじゃないか。

 お前、もともと女装して働いてたろ。

 客がお前を秘書と間違えたから、ちょうどいいと思っただけだ」

 茅野、こいつは、俺の弟だ、と玲を指差す。
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