私、今から詐欺師になります
「弟さんだったんですか。
 似てないですね」

 茅野はマジマジと玲と自分を見比べていた。

 玲は全体的に色素が薄くて、線が細い。
 自分とはまったく違うタイプの容姿をしている。

「弟とは言っても、義理だからな」

「血は繋がってないんだよねー」
と玲が笑う。

 何故、義理なのかとか、特に事情は追求せずに、そうなんですかーと茅野は流した。

 ぱっと見は、如何にも女性らしいが、中身は結構、男だな、と思う。

 噂話などにも興味はないらしい。

 茅野の話に寄ると、彼女の父の会社に、茂野はかなりの額を投資しているようだった。

 半分はポケットマネーのようだが。

 今は立て直せているとはいえ、そんな倒れかかっていた会社に、よく七億も出したな、と思う。

 会社を経営している人間にとっては、個人資産もみな会社の担保のようなものなのに。

 余程茅野と結婚したかったんだろうな、と思った。

 向こうは絶対に離婚などする気はなさそうだ。

 だからこそ、このとぼけた嫁には出来そうもない結婚詐欺で稼いでこいと言ったのだろう。

「茅野」
と穂積は、履歴書をデスクに置いて溜息をつく。

「悪いことは言わない。
 茂野のところに帰れ」
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