イゾンセイ
1日目 2人暮らしの関門とあれこれ
朝を迎えたのはいいが朝食をどうしようかと僕は1人悩み始めた。
「朝ごはん食べたいんだけど。お腹ぐるぐる言い始めた」
お腹をさすりながらこちら側に寄ってくる白。微かにだがぐるぐるとなっている。
「冷蔵庫勝手に漁っていいよ〜」
「ん、わかった」
そう言ったのには理由がある。
僕は料理が全くできない。
「わ、わわわなにこれ
ちくわばっかりじゃん……」
「食べていいよいっぱいあるし」
「いや、まってリョータって朝昼晩これだったりするの」
「時々あるよ」
「…よく生きてられるね……」
なんでこの子痛いとこばっかついてくるの。子供じゃないみたい。
「奥の方にタッパーあると思うからその中のやつ食べてもいいよ」
「あ、あった。これ肉じゃが?牛肉の肉じゃがなんだ。」
「まー作ってくれるやつがそっちの方が好きでさ。僕は豚肉の肉じゃがも食べてみたいんだけど」
「作ってくれるやつ?リョータ料理できないの?一人暮らしなのに?」
「火が怖くて、できないんだよ。お母さんが火で死んだからさトラウマってやつ?あはは、大人気ないけどね。こればっかりは」
白はごめんねと言った。だから僕は悪いのは白じゃないと言った。
これからは僕が作るよと白は言ったが、料理できるのだろうかと僕は思った。まぁレシピがあれば作れるし賢い白のことだからそれは任せるようにした。
「ところで作ってくれるやつって誰」
白が肉じゃがを食べながら言った。
「天戸ってやつ。天国の天に戸棚の戸であまと。昔馴染の知り合いでさ、ここの家賃払ってくれてるのもそいつ。」
「優しい人だね。何をしている人なの」
「医者」
「ふーん。リョータの人脈なんかすごいね」
凄いという割にやっぱり真顔だった。
あながち医者というのは間違ってないけど精神科の医者だ。冒頭あたりに話したと思うけど白には言わないでおこう。
いずれは話すことになるんだし。
そのあとは興味がなくなったのか白は黙々と食べ、しかも全部食べた。僕の分を残す選択肢は彼にはなかったらしい。
あとから気がついた白はごめんねと力なく謝った。
謝るくせがつきそうな気がしたし別にいいよと笑顔で返した。
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