サガシモノ
本当は泣きそうだったけれど、こんな時に健を不安にもさせたくなかった。


「咲紀……」


「驚かせてごめんね、じゃぁおやすみ健」


そう言って身を離そうとした次の瞬間。


あたしは健に腕を引かれ、抱きしめられていた。


そして唇に感じる健のぬくもり。


初めてのキスじゃないのに、心臓がドクンッと大きく跳ねた。


健はそっと唇を離し「おやすみ」と、囁いたのだった。
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