私に恋してくれますか?
水城さんと女性はコーヒーを頼んで、私の前に座り、
小さくて細身の可愛らしい20代半ばの女性が
「秘書課の吉野です。」と私に挨拶をした。

水城さんは
「雛子さん、五十嵐 透という青年は、雛子さんを連れ出してから、
付き合い始めたのですね。
あの家の兄弟の争いに巻き込まれただけなのではないですか?
それを知っても、雛子さんはあの青年と、お付き合いを続けたいのですか?」

「彼が、私を連れ出してくれて、
私はお父様と向き合う勇気をくれたのは事実です。
彼は、何も出来ない私を支えてくれています。」

「雛子さんを支えるのは、
例えば、足立先生や、他の男性ではいけないのでしょうか?」

「…私は彼が好きです。」と言うと、水城さんはやれやれと言う様子で、

「雛子さん、五十嵐 透という男は、
今まで女性と真面目に付き合っていたとはおもえません。
どの女性とも、半年付き合わずに破局しています。
彼にとって雛子さんは
今までの恋人達と違うと思いますか?」と私の顔をを覗く。


「…わかりません」と私は俯く。

「五十嵐 透と少し離れて生活してください。
近すぎる関係は、お互いの気持ちに錯覚を生みます。
例えば、最初に出会ったモノを親だと思う生まれたてのヒナのように…。」

「私の五十嵐さんに対する思いが錯覚だと?」

「確かめる必要があると思いませんか?」と水城さんは私の目を見つめる。

返事が出来ない私に、


「雛子さん、ルピナスに戻ってください。
ひとり暮らしは、していただいて良い。と社長の許可を取りました。
雛子さんの、自分の力で生活する。という思いは叶えられます。
後の事はゆっくり考えても良いのではないでしょうか?

ここにいる吉野 美鈴を3ヶ月間、雛子さんの代わりに
influenceの事務員として、派遣します。
その間に、また、事務員を募集すれば良い。
彼女は私の部下で優秀です。
influenceは困らないでしょう。」と私の顔を見た。

吉野さんは明るい可愛らしい笑顔で、
「引き継ぎを、よろしくお願いします。」と私に微笑んだ。

< 101 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop