私に恋してくれますか?

1年後。

あれから1年経った。

私はルピナスの仕事では周囲に気を配り、
自分に与えられた仕事はもちろんだけど、
周囲の人がどんな仕事をしているかっていうのを観察し、
スムーズに仕事が出来るように心がけた。

遅すぎるくらいだけど、やっと私が自分のことだけじゃなくて
周囲の人に目が向けられるようになったのは
トオルくんのおかげだ。

トオルくんの仕事の仕方を見ていたら、
自分の仕事がここでどんな風に会社の役に立っているかって
っていうことを考えるようになった。
そして、周りの人がどんな仕事をしているかっていうことにも
興味が湧いてきたのだ。


屋上で、茜ちゃんとお弁当を食べていると、
(まあ、引っ込み思案はそう、すぐにはなおらない。
相変わらず、静かな屋上が好きだけれども)

「雛子さん、恋人が海外に行っちゃってるのに、
すごーく生き生きしてますね。」と茜ちゃんが私の顔を見る。

「そう?トオルくんに会って、私の世界が広がった気がするの。
実際は私が周りに興味を持ち始めた。って事なんだけど…」と言うと、

「恋って、ヒトを成長させますよねえ。」
としみじみ言うので、私はプッと吹き出し、

「茜ちゃん、好きな人でも出来た?」と聞くと、

「この間行ったBARのマスターが素敵なんですう。
今度一緒に…いや、雛子さんを連れて行ったら、
マスターが雛子さんを好きになるかもしれないのでやめておきます。」
と私に顔をしかめてみせる。

「恋って面倒ね。」と私が言うと、

「面倒でも、元気が出ます!」と笑ったので、私も微笑む。


そうだよね。

トオルくんを好きでいるだけで
私は元気でいられる。


「はい、おすそ分け。」と卵焼きを箸でつまんで茜ちゃんに差し出すと、
茜ちゃんはぱくんと食べて、

「おいしー。」と笑う。私達は楽しいお弁当の時間を満喫した。






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