もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
彼は、この町へ転校してくる前、コンビニに行くのにも歩きだと一時間もかかってしまうような田舎に住んでいたという。
そんな田舎に住んでいた彼は、もともと目立つようなタイプではなかったけれど、今よりももっと明るい性格だったそうだ。学校が終わった後や休みの日には、田舎の町で友達と虫取りをしたり、川に入って遊んだりしていたと、懐かしそうに話した。
今の彼からは想像もつかないような姿。だけど、そんな彼を想像すると、私はなんだか嬉しくて、気づくと頬の筋肉が緩んでしまっていた。
しかし、そんな彼は、高校一年生の時に止まらぬ咳や痰が絡むという症状に悩まされ続け、病院で診察をしたところ自分が心筋症という難病だと知らされたという。
彼はその後、自分が難病にかかっているというショックからほぼ一年近く引きこもってしまい、明るくて誰とでもよく話していたという性格も、塞ぎがちな暗い性格に変わってしまったという。
そんな彼を見かねたご両親は、彼の病気を治すため。そして、彼を学校へ通わせるために慣れ親しんだ町を離れ、この町へ移る事を決めた。
そして、転校してきた初日。学校内で見つけた向日葵柄のハンカチを落としもの箱へ入れた。それが、私と出会うきっかけになる。
塞ぎがちになっていた性格のせいもあるけれど、見知らぬ土地の学校へやって来た転校初日だ。もちろん緊張もしていたし、不安なこともたくさんあったという彼を、突然呼び出したのが隣のクラスの私。
そんな私のことを、彼は最初すごく苦手に思っていたと話した。