強引専務の甘い手ほどき
第1章。

なぜか秘書。

横浜駅でJRに乗り、水色の電車で10分。
観光地でオシャレなヨコハマブランドが
こぞって店を出している商店街に私の勤める
洋菓子店「ルピナス」本店がある。
ここは老舗の洋菓子店で、昔ながらのオーソドックスなケーキが人気。
東京、神奈川県(本店が横浜)を中心に20店舗以上を展開し、デパートの中にカフェも経営している。
ルピナスのケーキは良い材料を使ってあって、とても美味しい。

本店は3階建の石造りの雰囲気のある店構えで、
1階が店舗と、ティールーム。2階が厨房。3階が事務所になっている。
3階の更衣室で、水色のワンピースタイプの制服に着替える。
165センチでやせ形なので、ちょっとワンピースが体から浮き上がり気味だ。
もう少し、胸にボリュームがあれば、女らしいのに。
髪は明るく茶色で肩まで真っ直ぐ。仕事の時は後ろで結んでおく。
鏡に映る顔は面長で、キュッと上がった目尻のいつもの顔だ。
キツそうに、ハッキリしていそうに見えるんだけど、
中身はそうシッカリしているわけではない。
28歳になっても、落ち着きなくおっちょこちょいで、
慌てると、つまずいて転んだり、
どもって上手く話せなくなったりする事はしょっちゅうだ。
ただ、ルピナスのケーキは大好きで、
ここのケーキの事なら、随分と詳しくなっているかな。

まあ、18歳でアルバイトからはじめ、短大を出て、ここに就職して、
もう、8年になるから当たり前か。
でも、毎日、ここの店の甘いケーキの香りを吸い込むと、
とても幸せな気分だ。
もちろん、他の店のケーキも好きだけど、
ここのケーキは特別だ。
特に最高級の生クリームと上品な甘さのカスタードクリームは最高級ののバニラビーンズの香りがつけてあるシュークリームは絶品だ。
うちのパティシエの(社長の右腕52歳。)
紺野(こんの)さんはきっと、魔法使いだ。
本店でしか食べられない限定品。
だけど、また、食べたい。
といつも思わせてくれる。
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