乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ふたりの出逢い
 その日、大事な商談があった。

 杏樹は、変更の時間を知らされず、みんなの冷やかな視線が何故、自分に注がれたのか分からなかった。

 営業課の友人から呼び出されるまでは。

「ちょっと、何!?今から大事な商談なの!」

「すぐ済むから…。いいから杏樹、来て!」

 杏樹は訳もわからず、友人の後をついて、会議室に入る。友人の剣幕に、ただ事じゃないと感じる。

「何があったの!」

「あんたが抱えてる商談。今終わったから…。」

 杏樹は一瞬考えた。商談とは、午後一で行うあれだろうか、ウェディングの大事な商談のことだろうか。

「はぁ!!!?」

 この友人は何を言ってるのだろうかと、驚きのあまり大きな声を出してしまった。

「何、何いってんの?」

 友人の話では、営業課に朝一で商談相手から電話が入り、時間を10時に代えて欲しいとの内容であった。
 
 杏樹は、10時から別の案件を抱えていたため、10時には難しい旨を伝えようとしたところ、杏樹と同様、商談に参加する男がそれを了承した。
 
 10時前に受付で友人が対応したことで、友人も気がついた。その後、杏樹なしで商談が始まったらしい。
 
 先程、商談がまとまったらしいが、採用されたのは、何故か男の名前で出された、杏樹のものだった。

「はぁ~?その企画は私が造ったものじゃん!」

「驚くことはまだあるのよ…。」

「えっ?」

「昨日、女子会で話した内容が採用されたのよ…。」

 杏樹は、さらにびっくりして声が出ず、口元に思わず手を当ててしまう。

「…杏樹。」

「昨日の女子会って…。えっどうゆうこと…。」


 ふと、二人は昨日のことを思いだした。

 昨日は、私、立花杏樹(たちばなあんじゅ)と目の前にいる同期の友人、佐々木梨絵(ささきりえ)で杏樹のアパートで宅飲みをしていた。

 そこに、私のルームメイトである後輩の夏川かすみ(なつかわかすみ)が帰ってきたため、3人で、楽しく飲み食べを始めた。

 そこで、私は急にひらめき、商談用の企画を変更する事を思いつき、あれこれ二人に話をしたあと、夜中から企画をパソコンで打ち込み、朝方にはほぼ出来上がり、安堵し、一時間程度眠ってしまった。
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