乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
あれから、どれくらいたっただろうか、用事を済まし会社に戻ると、社長室に明かりがついていたため、悠一は、ノックして入る。
「まだ、仕事か?」
「あぁ、悠一か、お前こそ、今まで何してたんだよ。」
「……社長の病院にいたよ。」
一瞬、杏樹の事を話そうとしたが悠一は口を継ぐんだ。
「そうか、ありがとう。……じゃ、俺は今から帰るわ。あやめさんと食事でさ。遅れたら行けないからさ。」
悠一を横切ろうとしたとき、悠一が雅輝の手首を掴んだ。
「ね、本当に杏樹ちゃんは良いの?」
「まだ、それ言ってんの?」
曖昧に笑って済ませようとした雅輝は、悠一の真剣な顔を見て、"……あやめさんと約束があるんだ"と力なく呟く。
「俺は、あの時殴りあいを続けても引き留めるべきだったと今でも思ってるよ。」
「……もう、思い出にするんだよ。」
「結城さんは、お前が求めてた一緒に歩んでくれる人じゃないよな?あの人のわがままや、杏樹ちゃんに対しての仕打ちは見るに絶えられないものもある。何より、従業員からあの人も、お前も資質を問われている。会社のための結婚が会社をダメにするんだよ!!」
「そんなのわかってるよ!!わかってるんだよ……。」
悠一が投げ掛ける訴えに対して、雅輝は全身を振るわせながら答える。
悠一がスッと封筒を取りだし、渡す。それは、退職届とかかれたものだった。
「杏樹ちゃんから。…受理した。」
その言葉に雅輝が素早く反応した。雅輝は、会社の中で杏樹をこっそり見つめられれば、それで満足だと思っていたのだ。もし、仮に結婚しても、あやめが職場に来るのはその内収まるだろうと考えていたから、あやめが来なくなれば、密かに杏樹を見て癒されれば、結婚生活なんてどうにかなると思っていたのだ。
そんな杏樹がいなくなるときいて、雅輝は、表情をなくした。
「それともう一つ。……報告書。」
悠一が渡したのは、分厚いファイルだった。中を見た瞬間、雅輝の顔が怒りに満ちたものに代わる。
ードンー
雅輝が力一杯、壁を叩く。
「これはどういうことなんだ……。」
「今日、社長の病院で杏樹ちゃんの父親にあったんだ。その流れで、杏樹ちゃんの父親がクリスだということが分かって、それから調べあげた。」
悠一は、病院からでてすぐに、結城財閥のことや、社長とクリスのことを調べたのだ。
初めからこうすれば良かったと、何度も思いながらも。
雅輝のために、幸せになってもらうために、あの時のことを後悔しながら。
「悠一、アトリエに行って杏樹に逢ってくる。」
「えっ?杏樹ちゃんは、アトリエにいないよ…。」
それから続く言葉を聞くなり、すぐに雅輝は走り出した。