乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ふたりの幸せの軌跡(おまけ)
 雲ひとつない澄みきった青空のもと、オフィスーラポールー横のブライダルホールでは慌ただしく準備に追われていた。

 今日は、雅輝と杏樹の待ちに待った結婚式と披露パーティーだ。

 杏樹の妊娠がわかって4カ月。

 急ピッチで雅輝によって準備されたウェディング企画は、色々な人の協力があったからこそ実現したようなものだ。

 世間を賑わせた雅輝のプロポーズから、数日後に結婚式は寒くなる前に執り行いたいと、雅輝は社長たちに話した。

「安定期になったら多分、お腹が大きくなって、打ち掛けダメだって言われたんだよ。」

 そうみんなに説明しなが、雅輝は顔を緩め、ニヤニヤしている。

「雅輝、しまりのない顔をして、どうせ杏樹ちゃんのドレス姿でも想像してるんだろ?」

 悠一にからかわれるが、本人は"それがどうした"と言いそうな顔をしている。

 杏樹には、あまり式に対しての強い希望はなく、ただ漠然とした希望だけがあり、雅輝に聞かれたとき、杏樹が出した条件は3つだった。

 ひとつ目は、白愁先生の打ち掛けを着ること。

 ふたつ目は、うさぎのぬいぐるみを二人の座る高砂のテーブルの中央に置くこと。

 みっつ目は、最近レース編みにハマっている雅輝に、ベールをつくって欲しいということ。

 この3つだった。

 雅輝は全部を叶えて挙げたくて、産婦人科に一緒に着いていき、先生に聞いたのだ。

『う~ん、安定期に入ったらといいたいとこだけど……双子たから、安定期に入ったら普通の妊婦よりお腹がでて結婚式所じゃ……。4か月とかならいいかなぁ。』

 そう提案され、今日することに決めたのだ。

 雅輝は杏樹を本当に大切に思っている。でも、どうしても杏樹に許して欲しいことがあったのだ。

*******

「杏樹。」

 結婚式の前日の昨夜。仕事から帰ってきた雅輝が真剣な顔をしてお風呂上がりの杏樹の部屋にやって来た。

「おかえり、雅輝さん。」

「杏樹に話があって……。」

「?」

 杏樹は黙って雅輝を見つめて、次の言葉を待つが、いつまで待っても雅輝は話そうとしない。

「雅輝さん?」

 それから暫くしても何も言わない雅輝を不思議そうに見る杏樹の目をじっと見ながら、何かを呟いた。

「?よく聞こえなかったけど……。」

「……抱きたい。」

 唐突の申し出に杏樹は目を丸くした。

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