乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
「杏樹。」

 ベットに座っていた杏樹の横に座り、両手を握りしめられ、杏樹の顔を覗き込むように見る。

「あの時、酷い抱き方をした。」

 雅輝が言う、酷い抱き方とは、お腹に二人が宿るきっかけになった時のことだと杏樹はすぐにわかった。

 二人は、赤ちゃんが出来てからの4か月の間、抱き合うことはなかった。ただ、杏樹は赤ちゃんのために抱かないのであって、あんまり気にしてなかったのだ。

 あの時のことは、ちゃんと和解していたので、雅輝が未だに気にしていたのだと、逆にびっくりした。

「雅輝さん、その事はもういいんですよ?」

「……赤ちゃんが出来たのは本当に嬉しい。だけど最後に抱いた記憶があんな乱暴で、自分の欲を満たす抱き方なのが許せないんだ。優しくたっぷり甘やかしたいのに……。あの時、背中合わせに寝て、腕枕もせずに、顔を見ずに部屋を出た記憶が、頭から離れないんだ。」

 そう語る雅輝の目にうっすらと光るものが見えたような感じがするが、ほんの一瞬だった。

「……雅輝さん。たっぷり愛して!抱いて欲しい!」

 杏樹は、雅輝の両手を返して、はっきりとそう言葉にした。

 顔をあげた雅輝と目があうと、杏樹は微笑みながら雅輝の手をお腹にあてた。

「赤ちゃんたちも、パパとママがラブラブだと嬉しいと思うから……。優しくね?」

 その言葉を合図に、雅輝はゆっくりと杏樹を押し倒した。優しく唇を重ねて、パジャマのボタンをひとつひとつ外す。久しぶりの時間に、恥ずかしさが募り、初めての時を思い出してしまう。

「…杏樹…。好きだよ、愛してる。」

 何度も呟きながら、優しいキスの雨が降ってくる。

「雅輝さん……愛してる……。」

 唇から鎖骨、胸からお腹に優しいキスが降り注ぐと、いつも以上に敏感に反応し、口を押さえて声を我慢する。その仕草を、横目で見ながら急に、吸い付かれ、思いっきりのけ反ってしまい、自分でも驚いた。

「!!!!っ、ぁあんっ!!」

「杏樹、もしかして、ずっとして欲しかったの?」

 クスッて笑われ、杏樹は心を見透かされたように感じ、雅輝から視線を思いっきりそらした。

「…ちっちがうっ……もん。」

 そう否定しても、反応の良さが杏樹の体の方が正直と物語ってしまい、雅輝はこれまで以上に執拗に攻めるのを止めない。

 どんどん息が荒くなり、二人がお互いを強く求め、気がついた時、杏樹は雅輝に抱き締められ眠っていたようだ。
< 112 / 116 >

この作品をシェア

pagetop