乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
「ん?それは?」

 雅輝が、杏樹か大事そうに抱えている荷物に目をやる。

「あっ、大事なものなので、抱っこしていきます。」

 布で綺麗にまかれた、それを大事そうに見つめ、

「これに被害がなくて良かった…。」

と、呟いた杏樹を見て、雅輝もなぜか心が温かくなった。

 積込が終わったと、外から悠一に声をかけられ、二人とも玄関にいく。

 杏樹は、振り返り最後に、部屋を見渡した。

 雅輝はそんな様子をただ黙って見てくれている。

 手に持っていたキーケースから、部屋の鍵を取り外し、玄関の外に出て鍵を閉めた。

 その鍵を郵便受けに入れ、"行きましょうか。"と、雅輝に声をかけ、二人で、アパートを後にした。


 雅輝と悠一に手伝ってもらいながらの、荷取きは早く一時間足らずで杏樹部屋が出来上がった。

 杏樹は1ヶ月しかお世話にならないつもりだった。

 しかし、陽当たりの良い部屋に、自分のインテリアがすごくまっちしていて、初めから杏樹が暮らしていた感じが漂っている。

 ウサギを抱き締めて寝ていたベットはそのまま使っていいと言われ、新しいウサギも準備してくれた。

 クローゼットがなかったが、アパートから戻ってくると、かわいいハンガーラックが準備してあり、杏樹は恐縮しながらも使わせてもらうことにした。

 ふつうあまり知らない人間に、こんなに良くしてくれる人はいないだろうと、不思議でならない。

 聞いても、笑うだけの雅輝。

 見た目、そんなに面倒見が良さそうには、とても見えないのにと、思ってしまう。

 でも、自分と一緒なんだろうなと思うと、杏樹は、外見で判断してはいけないなぁと改めて思ってしまうのだ。


 ー夜8時ー 
「杏樹、ご飯~!!」
 
「は~い!」

 キッチンに行くと、湯気が立ち上がるお蕎麦が準備してあった。ネギにミョウガに生姜、一味などが別に置かれ、お蕎麦にはエビがのっていた。
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