乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
「七瀬さん…。」

「後で何かあった時の為に、念のため。」

 杏樹は、そう話す悠一に、"敵にまわしたくないタイプ"と呟き、部屋を見渡す。

 絵梨の話の通り、ありとあらゆる場所を探された結果なのか、泥棒が入ったのか、考えていると雅輝に見抜かれ、杏樹を見ずに話す。

「ルームメイトだと思うよ、犯人。」

「…。」

「隣の部屋は開けっ放しでも、被害がないだろ?」

 そう言われ、かすみの部屋をみると、確かに、部屋のドアが空いてるのに荒らされた形跡はない。

「泣きたいなら後で、肩でも胸でも貸すから、全て運びだそう!」

 雅輝の言葉に一瞬驚くが杏樹は、とにかくこんな部屋からすぐにでも出たいと思い、持ってきた段ボールに荷物をいれ出す。

「雅輝さんより、あのウサギを抱き締めたい…。」

「ダメ、あれは、嫁入り決まったんだから!」

「じゃ、もふもふっ子なら何でもいいよ…。」

 そんなやり取りを見ていた悠一が、ニヤニヤしていたのに二人は気がつかなかった。


 三人で部屋を片付けていく。杏樹の部屋はベットはなくチェスト2つに小さなドレッサーに、姿見に折りたたみの小さな机とあまり大きな荷物はない。そのままの状態で、アトリエのトラックに乗せてもらい徐々に部屋がきれいになる。

 クローゼットの服やかばんなどは、杏樹がどんどん段ボールにつめて行くため、あとは、リビングにある家電のみとなった。

 かすみと二人で買ったものは置いていくつもりで、リビングを見渡す。

 一緒にグリーンスムージーをつくったスムーサーや大きなテレビ、一人で使うには大きすぎる冷蔵庫。

 杏樹は、思い出し、その度にウルッとしてしまう。

 どこでこんな風になってしまったんだろうと。

「リビングはこのままでいいです。」 

 杏樹は、キッチンに出されたお皿を片付けながら言った。
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