乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
 連条のイニシャルと"連なる"という意味を持つラポールを合わせて名付けられた会社は、雅輝の父の経営手腕と悠一の父の財務管理能力から成っている。

 悠一は、総務課人事部の課長を勤めているが、副社長の席は空席で、専務である雅輝の叔父が狙っていると噂がある。

 そういう内情は、全て悠一から雅輝に報告が行くようになっていた。

「あの女、ベタベタ触りやがって。」

「部屋にでも誘われた?……誘われたんだね。」

「はぁ……。あーゆー女と生活なんてムリ。しかも、結婚だなんて…。」

「かなり参ってるな。」

「優秀な社員が会社にはいるだろ?最近やたらと叔父が連絡してくるんだよ…。」

「まぁ、俺からは詳しく言えないから。来週末、社長が会いに来たいって言ってたよ。」

「アトリエにか?」

 頷く悠一にため息をつく雅輝。アトリエに父が来るのは対して珍しくはないのだが、杏樹がアトリエにいることを父は知らない。

「買い出しでも頼むかな…。」

「あっだったらさ、翻訳して欲しいのがあるんだが、家で手伝ってもらえないか聞いていいかなぁ。なずなが会いたがってるんだよ。」

「あぁ。例の解読不能な奴ね。」

「杏樹ちゃんならできそうだよね。あの店のあのウェイトレスにも、杏樹ちゃんを進められたんだよね。案の定、他の人には解読不能だったみたいで。」

「杏樹のこと、ホント何も知らないんだよな。俺。」

 空を見上げる雅輝の姿を横目でみた。何も知らないのに惹かれていく雅輝を見て、いい傾向だ、幸せになって欲しい。

 雅輝はいつもこの風貌から、肉食的なSっぽいとか、遊びなれてる、冷たそうと思われ、垣間見える笑顔とのギャップで女が寄ってくる。でも、ぬいぐるみ作家というと気持ちがられ、影でボロクソにいう女もいた。

 また、家柄を聞くと金に目が眩む女もいて、ぬいぐるみ作家だろうが、ステイタスで選ぶ強かな女もいた。

 だから、より一層杏樹のような存在に惹かれたのは悠一には理解出来る。
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