乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)

 雅輝と悠一が知っている杏樹とは、見た目は教会のステンドグラスに描かれる天使のようにきれいで、たが、性格ははっきりと物を言い、フランクな女性で、毒舌な時もある。

 流暢なフランス語を話、杏樹の本当の姿を知るのは、ほんの僅かしかいない。その僅かな人間に、雅輝も悠一も含まれる。

 そして何故か気になるのは、クリスフォード・アラン氏との関係だ。何故あんなに難関な人間と接触出来たんだろうか。

 そんな事を悠一は思いながら、再度雅輝を見ると、変な顔をした雅輝と目があった。なんだよっみたいな顔をされ、悠一は、いいやっとだけ言葉を発した。

 

 杏樹は、悠一と別れたあと、近くの本屋さんいた。

 気になる本を手に取りながらも、頭を占めるのはさっきの光景。

 いつもと違う雅輝に、和服美人。

 あの和服美人は、彼を本当に知ってるのだろうか。

 ぬいぐるみをこよなく愛し、料理を作るのが趣味で、顔に似合わず世話好きで、聞き上手。

 そんな姿を知ってるのは、自分だけじゃないのだろうか。そうであって欲しい。

 そう思うと、胸の奥がキュント締め付けられるとともに、温かくなる。

 だが、ふと思った。和服美人は本当に彼女なのかも知れない。それと同時に杏樹は、雅輝について殆ど知らないことを思い知った。

 彼をもっと知りたい。

 杏樹は、手に持った本に目をやることなく、どこか遠い目をしていた。
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