乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ふたりで夜更けの絵画鑑賞

 ある日、杏樹が雅輝から頼まれて、ぬいぐるみの資材調達に行った帰り、二人組の男性に声をかけられた。

「立花杏樹ちゃんだよね?」

 ニタニタとしたチャラそうな大学生風の二人に、杏樹は不快感に露にし、睨み付ける。

「その顔もかわいいけど…。あの格好のあんたの方が、かわいいよ。」

「二人でもOKなんだよね?行こっか!」

 二人に手を引かれそうになり、杏樹が"やめてください!"と声をかけ、バタバタしている所を、カップルが通りかかり助けてくれる。

「大丈夫ですか?」

 女性に声をかけられ、杏樹は"すみません。"と、か細く声を出す。

「悪い、取り逃がした!!って、杏樹ちゃん!?」

 二人組を追いかけていった男性は、悠一だったらしく、杏樹をみて驚いてた。

「杏樹ちゃん、大丈夫?」

「はい、突然、声かけられて…。」

「アトリエに送るよ。」

「えっでも、デート中じゃ…?」

 杏樹が悠一のそばにいる女性に目を向ける。

「大丈夫ですよ!悠ちゃんから杏樹ちゃんのこと聞いてて会いたかったし。連条さんとこなら、私も行きたいし。松坂なずなです。よろしくね!」

 そう笑顔で答えるのは、茶色の髪を頭の上でお団子にし、前髪を編み込んでいる杏樹より年下に見える女性だ。


「ただいま戻りました。」 

 杏樹が悠一となずなとアトリエに戻ると、一瞬驚いてたがフッと笑って、おかえりと行ってくれる。

「そこで絡まれてたのを助けて貰って。」

「絡まれた?大丈夫か?」

「はい。」

 頼まれていたものを雅輝に渡すと同時に、アトリエ内にケータイの着信音が鳴り響く。

「さっきから、何回も鳴ってるよ?」

 杏樹は、外出の時にケータイを持って行かなかったことを思いだし慌てて見ると、表示は絵梨からだった。
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