乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
次々に出てくる豪華な懐石料理を、杏樹は恐縮しながら口に運んでいた。
岩倉が部屋に入ってきてから、数分後に仲居さんが
料理を机に並べ、岩倉に言われるままに向かいあって、食事をしている。
「ここの食事は、前菜からデザートまで、絶品なんですよ。」
「確かに…。でも、これって私、接待受けてるみたいです。」
杏樹が岩倉を見ながら話すと、じっと見つめられすぐに笑われた。
「……接待ですか…。どちらが接待するんでしょうね…。」
「えっ…!?」
杏樹は耳を疑った。岩倉を見ると、笑顔は消え、ニタニタとした厭らしい笑みに変わっていた。
「こんな綺麗な子が何の疑いもなく、ここに来るなんて…。凄く嬉しいよ、仕事の話より、君のことが知りたいよ。」
「何言ってるんですか?頭を冷した方がいいですよ。」
気がつけば目の前にいたはずの岩倉は、杏樹の膝に自分の膝が付くほど距離を近づけていた。
膝と膝がふれ、杏樹はビクッとなり、固まってしまう。その瞬間に伸びてきた手が、髪留めふれ、一瞬のうちに髪をとかれてしまう。
「君が大本命なんだよね。難波さんに頼んで良かったよ。」
「…難波さん?」
「正直、クリスフォード・アラン氏はどうでもいいんだよ。別の画家でもいいんだし。…でも、君はその責任を取ると言う形でここに来てるんだよ?」
「難波さんと同類なんですね。」
「同類ね…あいつよりかは、鬼畜じゃないよ?ちゃんと優しくするし?君も初めてじゃないでしょ?」
そう言う岩倉は、髪を触っていた手を肩まで下ろし、顔を近づけて来る。咄嗟に、近くに置いていたかばんを顔の前につき出す。
それが岩倉にヒットし、顔を抑え痛がっている。
その隙に逃げようと襖を開いた瞬間、杏樹はさらに固まってしまう。
開いた襖は、自分が入ってきた襖ではなかったらしく、布団が開かれた妖艶な寝所だった。
「これは…。」
「……ここ、隣が布団だから、いい場所だろ?」
すぐ後ろに、岩倉がいた。
振り返り後ずさりして、はっと気が付く。
自分が逃げ場がない所に踏み込んでしまったことに。
岩倉から、舌舐めずりするように上下を見られ、かばんついているぬいぐるみを握りしめた。