乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ーその代わり、クリスフォード・アラン氏じゃない画家でも、ラポールの企画を通すと約束したんだよ。ー
その話を、警察から帰ってきた悠一に聞かされた時、杏樹は鳥肌がたった。
そんな取り引きがあったこと、そんな取り引きの対象になった女性たち、対象になった自分。今まで、明るみに出なかったこと。
難波が、ラポールのウェディングの企画を通すことが出来たのは、そうやって何社も蹴落として来たからだった。
その様な事実が分かったからには、契約を続行するわけには行かず、ラポールから今回の企画を見送りる連絡が入ったのだ。
でも、その決定に納得していない人もいるわけだ。
「君は、立花さんだね?クリスフォード・アラン氏にアポをとったのは?君は、昨日岩倉とあっていたんだろう。そこで何があったか知らんが、ラポールの企画を再度選考し直すと言ってきた。君がなんか不適切なことをしたんじゃないか?」
ジロリと睨みつけられる。
課長がごくりと唾を飲み込む音が聞こえ、フロアの人間も杏樹に視線を向ける。
難波は、かすみを抱き締め、心配している優しい同僚のようにパフォーマンスをしながら、杏樹に向ける視線は、余計なこと言うなよっ、と言わんばかりに睨みつける。
「クリスフォード・アラン氏に打診したのは、私です。来月に来日するようです。」
「なら、それをどうして報告しない?」
「私は、自分の企画が他人の企画になったこと、許すつもりはありません。アランは、私との企画だから納得してくれました。他の誰でもなく、私の企画たからです。」
専務は顔を歪める。
それは、このフロアの社員もみんな同じだ。
企画発案者は、難波なのだから。
社員も口々に杏樹に非難の声を浴びせる。しかし、杏樹は、ものともせず凛としている。
「難波さんに企画をとられたことは、もういいんです。ラポールの企画自体がなくなったのですから。」
難波の顔が険しくなるのが分かる。