乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
「何をいってるんだ。難波くんは間違いなくここのトップだ。それを…君は…あきれたよ。」

 専務は、杏樹の話しを鼻で笑い、全く相手にしない。

「トップ?難波さんが?」

 杏樹がフフっと笑い出すと、ざわめきがフロアに流れる。

「君は、自分が女の武器しか使えないからって…。岩倉のことも、自分から誘ったんじゃないのか?ラポールの担当になりたいばかりに。それなのに、事を大きくして。」

 そこまで言われ、杏樹の堪忍袋の尾がキレた。

「私は、そんなこと一度もしたことありません!女の武器ってそれってセクハラ、パワハラです!私だけのことなら構いません!でも、フロア内でのその発言は、女性に対する侮辱です!!それに、ラポールの企画がなくなったのは、難波さんの自業自得です!」

 フロア内に響き渡る声を出したことで、みんなのざわめきが一瞬にして止む。

 だが、ほんの数十秒もしない内に難波を援護する声が聞こえる。

「難波さんをやっかんでるんだわ。」
「今まで猫かぶってたんじゃない?」
「本当、難波さんはここのトップなんだから。」

 難波のいつもの取り巻きたちだ。もちろん、何も言わずにただ見守る人もいる。

「君は、上司に向かって何て口を聞くんだ!この専務の私に!」

「専務ならなおさら、自分の発言には影響力があることを自覚された方がいいと思います。」

 専務の目をじっと見ながら、はっきりと言い切る杏樹に、専務の顔はますます、険しくなる。

「……!!君!!本当、不愉快だ!上司に楯突くやつはこの会社にはいらん!辞めてしまえ!!」

 これで黙るだろうと、偉そうに見下す専務から目を逸らし、鞄の中に忍ばせていた、それを取りだし、課長の席まで足を進める。

「本日付で受理をお願いします。」

 杏樹が出した、それに課長は慌てる。

「た、立花!」

 辞表とかかれたものを見て、立ち上がる。

「私は、ここに勤めて初めて企画が通った時、皆が自分のことのように喜んでくれたこと今でも覚えてます。本当に嬉しかったんです。かわいい後輩も出来て。社名と同じように絆がここにはあると思ってました。でも、もう信頼して仕事をすることは出来ません。」

 課長は何か言いたそうにしていたが、専務が横から辞表を奪い"受理してやるから早く出ていけ!!"とかすみと難波をつれてフロアから出ていった。

< 42 / 116 >

この作品をシェア

pagetop