乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
「ゴホゴホっ。…同棲してるのか?」

「同居!」

「体の関係は?」

「ねーよ!!そんな節操なしに見えるかよ!?」

「見えないよ。今までのこと知ってるから驚いた。嬉しいとも思ってるよ。」

 顔が赤くなり"…嬉しいってなんだよ。"とハニカミながら呟く雅輝にクスクスと父親は笑い出した。

「笑ってんじゃねーよ。要件は?」

「…岩倉君のことが引き金で、専務の派閥が勢いを増しそうなんだ。」

 二人の中に張りつめた空気が流れる。

 岩倉は専務の派閥には入らず、周りとは関わらない飄々としたスタイルで、今回のブライダル企画の担当にのしあがり、岩倉の派閥の人間は関わることが出来なかった。

 ブライダル企画がラポールのこれからを大きくし変えていくことは間違いなく、専務はどうしても、自分の息のかかった人間をにしたかったのだ。

 そうした中での岩倉の警察沙汰は、専務には願ったり叶ったりの転機だったのは言うまでもない。

「外部と提携するのではなく、ブライダル部署を立ち上げてはどうかと、専務が意見してきたんだ。…それは、確かに私もそう思い反対しなかった。だが、彼が推薦するのは専務の息のかかった人物ばかりで、正直……有能とは思わない。」

「それで、俺にどうしろと…。」

「早い段階で、決断して欲しい。そして、ブライダル企画を先導して欲しい。ブライダル企画は会社のターニングポイントになるはずだ。だから…。」

「分かった。3つ条件がある。」

 雅輝の出した3つの条件を、父親は承諾した。


 
 父親が条件をのんでくれたから、ここにいるわけだが、と思っていると、悠一がニヤニヤしているのに気がつく。

「お前にしたら思い切った条件だなと思って。」

 ニヤニヤしていることを詫びる様子もない悠一に、雅輝は苦笑する。

 雅輝が出した条件は、1つめ。アトリエを残し、今受けている仕事は最後までやりきりたいこと。

 2つめ。政略結婚ではなく、恋愛結婚をしたい。特に、結城財閥の娘とは結婚したくない。

 3つめ。杏樹をブライダル企画のメンバーとして連れて行くこと。

「俺も腹をくくったんだから、それくらいしてくれないと。」

 雅輝は着なれないスーツの襟を直しながら、前を見てそう話した。


 
 
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