乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
 デスクを片付け、自分の荷物をまとめ始めると、難波が近くにやってくる。

「立花。そんなに落ち込むなよ。言いがかりもやめてくれよ?」

 みんなも口々に"そうだ、そうだ。"と言ってるのが聞こえる。

「言いがかりね…。」

 フンと笑うと難波は顔をしかめる。

「私、知ってるのよ?あなたが大きな商談をまとめられるのは、綺麗なパトロンの力だって。何人いたかしら?」

 難波の顔つきが変わる。かすみも顔つきが変わるのを見逃さなかった。

「じゃ…。」

 杏樹は、唖然とする企画課の人間を尻目に颯爽と企画課を出た。

 会社を出るとき、受付にいる友人、絵梨と夜飲みに行く約束をした。

 会社から一歩出れば、度々すれ違う人が振り替えって杏樹を見る。

 色素が薄い大きな瞳に、くせ毛で自前のハニーブラウンの髪の毛は肩甲骨あたりで、なびいている。
 
 スタイルもよく、服のセンスもよく、華やかなイメージたが、ふとした表情に憂いも感じられる。

 知らない人に微笑んだりすると、"天使みたいな子だね。"なんて言われるが、名前を言うとさらに、そう言われる。"やっぱり名前ってその人を現すんだね"と。

 でも、一度口を開き、お酒などで饒舌になると、"詐欺じゃない?""騙された!""口を開くなよ!"と言われることは度々。

 そのため、入社して4年。黙って、微笑んで、仕事をしてきた。
 杏樹の口の悪さを知ってるのは、絵梨を含む同期のメンバー数名だけ。

 同期の飲み会だけが、地を出せる場所。

 だから、かすみと暮らしながらも、かすみは杏樹の性格を知らなかったのだ。

 一緒に、暮らしてる部屋からパソコンと仕事用のスケッチブック、当面の服などをスーツケースに詰め込み、杏樹は部屋を出た。




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