乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)


「やってられん~!!!!」

 仕事終わりの絵梨と、同期で絵梨の恋人の吾妻渉(あがつまわたる)と居酒屋で飲み始めて、約一時間。

 焼酎をロックで浴びるように飲んでいる杏樹。

 すでに、グデングデンに酔っており、二人に対して、何度も今日の話を繰り返す。

「お~い、立花。飲みすぎ。」

 そう制してくれるのは、二重目で男にしとくには勿体ないくらい、瞳が大きく、睫毛がながく、えくぼが出来る、スポーツ狩りの絵梨の恋人だ。

「飲ませてあげなよ!」

 そう言うのは、パッツン前髪にフワフワのウェーブヘアボブに、キリッと繭のクールビューティーの絵梨だ。

 二人が並ぶと、女王様とその従者に見えるのは杏樹だけだろうかと、いつも思ってしまう。

 しかし、人もまた杏樹と絵梨を見ると、杏樹を受付嬢・絵梨を企画課の人間と間違えてしまう。

 見た目って怖いなぁと二人で話すこともしばしばだ。

「で、杏樹どうするの?」

「1ヶ月の有休の間に部屋を探す。そして、今日は、ホテルに行くよ!」

「なら、いいけど。泊めてって言っても無理だけど。」

と、言いながら絵梨はちらっと横の渉をみる。

「ラブラブ同棲カップルの邪魔はしません!と、言うことで、お開きで。寝てしまうといけないからさ。」

 そう言いながら、お金を置いてスーツケースを、もって店を出た。



 ホテルに泊まるといったものの、実は、少しばかり泊めてくれるんじゃないかと期待したため、ホテルを予約しなかった。

 近場にホテルが無いため、宛もなくふらふらとスーツケースとさ迷う。

 歩き疲れに酔いも合わさり、急に睡魔が襲う。

 その時、目の前が急に遮られ、何か、もふもふとしたフワフワした肌触りがいいものに押し潰される。

"何!?"と思うと、ふと、微かにラベンダーの香りがする。
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